妙法蓮華経従地涌出品第十五


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科段

本門序文

涌出序

他方弘経を請う

如来許したまわず

下方の涌出

◎経家の叙相
◎大衆の問訊

疑念序

此土菩薩の疑

◎長行の疑念
◎正問

他土菩薩の疑

諸仏の抑持

誡許

長行

◎誡
◎許

偈頌

◎誡
◎許

略開近顕遠動執生疑

略開近顕遠

長行

◎双答
◎双釈

偈頌

◎双答
◎双釈

因疑更請

長行

◎動執生疑

◎騰疑致請

法説
譬説

偈頌

◎法説

◎譬説

本門・序文

妙法蓮華経従地涌出品第十五

涌出序

他方請弘経 (他方弘経を請う)

爾時他方国土。諸来菩薩摩訶薩。過八恒河沙数。於大衆中。起立合掌作礼。而白仏言。世尊。若聴我等。於仏滅後。在此娑婆世界。勤加精進。護持読誦。書写供養。是経典者。当於此土。而広説之。

 爾の時に他方の国土の諸の来れる菩薩摩訶薩の八恒河沙の数に過ぎたる、大衆の中に於て起立し合掌し礼を作して、仏に白して言さく、世尊、若し我等仏の滅後に於て此の娑婆世界に在って、勤加精進して是の経典を護持し読誦し書写し供養せんことを聴したまわば、当に此の土に於て広く之を説きたてまつるべし。

 

如来不許 (如来許したまわず)

爾時仏告。諸菩薩摩訶薩。止善男子。不須汝等。護持此経。所以者何。我娑婆世界。自有六万。恒河沙等。菩薩摩訶薩。一一菩薩。各有六万。恒河沙眷属。是諸人等。能於我滅後。護持読誦。広説此経。

 爾の時に仏、諸の菩薩摩訶薩衆に告げたまわく、止みね、善男子、汝等が此の経を護持せんことを須いじ。所以は何ん、我が娑婆世界に自ら六万恒河沙等の菩薩摩訶薩あり。一一の菩薩に各六万恒河沙の眷属あり。是の諸人等能く我が滅後に於て、護持し読誦し広く此の経を説かん。

 

下方涌出 (下方の涌出)

◎経家叙相 (経家の叙相)

 ○涌出

仏説是時。娑婆世界。三千大千国土。地皆震裂。而於其中。有無量千万億。菩薩摩訶薩。同時涌出。

 仏是れを説きたもう時、娑婆世界の三千大千の国土地皆震裂して、其の中より無量千万億の菩薩摩訶薩あって同時に涌出せり。

 

 ○身相

是諸菩薩。身皆金色。三十二相。無量光明。

 是の諸の菩薩は身皆金色にして、三十二相・無量の光明あり。

 

 ○住処

先尽在娑婆世界之下。此界虚空中住。

 先より尽く娑婆世界の下此の界の虚空の中に在って住せり。

 

 ○聞命

是諸菩薩。聞釈迦牟尼仏。所説音声。従下発来。

 是の諸の菩薩、釈迦牟尼仏の所説の音声を聞いて下より発来せり。

 

 ○眷属

一一菩薩。皆是大衆。唱導之首。各将六万。恒河沙等眷属。況将五万。四万三万。二万一万。恒河沙等眷属者。況復乃至。一恒河沙。半恒河沙。四分之一。乃至千万億。那由他分之一。況復千万億。那由他眷属。況復億万眷属。況復千万百万。乃至一万。況復一千一百。乃至一十。況復将五。四三二一。弟子者。況復単己。楽遠離行。如是等比。無量無辺。算数譬喩。所不能知。

 一一の菩薩皆是れ大衆唱導の首なり。各六万恒河沙等の眷属を将いたり。況んや五万・四万・三万・二万・一万恒河沙等の眷属を将いたる者をや。況んや復乃至一恒河沙・半恒河沙・四分の一・乃至千万億那由他分の一なるをや。況んや復千万億那由他の眷属なるをや。況んや復億万の眷属なるをや。況んや復千万・百万・乃至一万なるをや。況んや復一千・一百・乃至一十なるをや。況んや復五・四・三・二・一の弟子を将いたる者をや。況んや復単己にして遠離の行を楽えるをや。是の如き等比無量無辺にして、算数・譬喩も知ること能わざる所なり。

 


◎大衆の問訊

 ○三業供養

是諸菩薩。従地出已。各詣虚空。七宝妙塔。多宝如来。釈迦牟尼仏所。到已向二世尊。頭面礼足。乃至諸宝樹下。師子座上仏所。亦皆作礼。右繞三ー。合掌恭敬。以諸菩薩。種種讃法。而以讃歎。住在一面。欣楽瞻仰。於二世尊。是諸菩薩摩訶薩。従地涌出。以諸菩薩。種種讃法。而讃於仏。如是時間。経五十小劫。是時釈迦牟尼仏。黙然而坐。及諸四衆。亦皆黙然。五十小劫。仏神力故。令諸大衆。謂如半日。爾時四衆。亦以仏神力故。見諸菩薩。ェ満無量。百千万億。国土虚空。

  是の諸の菩薩地より出で已って、各虚空の七宝妙塔の多宝如来・釈迦牟尼仏の所に詣づ。到り已って二世尊に向いたてまつりて頭面に足を礼し、乃至諸の宝樹下の師子座上の仏の所にても亦皆礼を作して、右に繞ること三・して合掌恭敬し、諸の菩薩の種々の讃法を以て、以て讃歎したてまつり、一面に住在し欣楽して二世尊を瞻仰す。是の諸の菩薩摩訶薩地より涌出して、諸の菩薩の種々の讃法を以て仏を讃めたてまつる。是の如くする時の間に五十小劫を経たり。是の時に釈迦牟尼仏黙然として坐したまえり。及び諸の四衆も亦皆黙然たること五十小劫、仏の神力の故に諸の大衆をして半日の如しと謂わしむ。爾の時に四衆、亦仏の神力を以ての故に、諸の菩薩の無量百千万億の国土の虚空に遍満せるを見る。

 

 ○陳問訊辞

  △標四導師

是菩薩衆中。有四導師。一名上行。二名無辺行。三名浄行。四名安立行。是四菩薩。於其衆中。最為上首。唱導之師。

 是の菩薩衆の中に四導師あり。一を上行と名け、二を無辺行と名け、三を浄行と名け、四を安立行と名く。是の四菩薩其の衆中に於て最も為れ上首唱導の師なり。

 

  △正陳問辞

   長行

在大衆前。各共合掌。観釈迦牟尼仏。而問訊言。世尊。少病少悩。安楽行不。所応度者。受教易不。不令世尊。生疲労耶。

 大衆の前に在って各共に合掌し、釈迦牟尼仏を観たてまつりて問訊して言さく、世尊、少病少悩にして安楽に行じたもうや不や。度すべき所の者教を受くること易しや不や。世尊をして疲労を生さしめざる耶。

 

   偈頌

爾時四大菩薩。而説偈言

 世尊安楽 少病少悩 教化衆生 得無疲倦
 又諸衆生 受化易不 不令世尊 生疲労耶

 爾の時に四大菩薩、而も偈を説いて言さく、
  世尊は安楽にして 少病少悩にいますや
  衆生を教化したもうに 疲倦無きことを得たまえりや
  又諸の衆生 化を受くること易しや不や
  世尊をして 疲労をなさしめざる耶



 ○仏答

爾時世尊。於諸菩薩大衆中。而作是言。

 爾の時に世尊、諸の菩薩大衆の中に於て是の言を作したまわく、

 

  △如来安楽

如是如是。諸善男子。如来安楽。少病少悩。

 是の如し、是の如し。諸の善男子、如来は安楽にして少病少悩なり。

 

  △衆生易度

諸衆生等。易可化度。無有疲労。所以者何。是諸衆生。世世已来。常受我化。亦於過去諸仏。供養尊重。種諸善根。此諸衆生。始見我身。聞我所説。
即皆信受。入如来慧。除先修習。学小乗者。如是之人。我今亦令。得聞是経。入於仏慧。

 諸の衆生等は化度すべきこと易し。疲労あることなし。所以は何ん、是の諸の衆生は世世より已来常に我が化を受けたり。亦過去の諸仏に於て供養・尊重して諸の善根を種えたり。此の諸の衆生は始め我が身を見我が所説を聞き、即ち皆信受して如来の慧に入りき。先より修習して小乗を学せる者をば除く。是の如き人も、我今亦是の経を聞いて仏慧に入ることを得せしむ。

 

 ○偈頌随喜

爾時諸大菩薩。而説偈言

 善哉善哉 大雄世尊 諸衆生等 易可化度
 能問諸仏 甚深智慧 聞已信解 我等随喜

 爾の時に諸の大菩薩、而も偈を説いて言さく、

  善哉善哉 大雄世尊
  諸の衆生等 化度したもうべきこと易し
  能く諸仏の 甚深の智慧を問いたてまつり
  聞き已って信解せり 我等随喜す



 ○如来述歎

於時世尊。讃歎上首。諸大菩薩。善哉善哉。善男子。汝等能於如来。発随喜心。

 時に世尊、上首の諸の大菩薩を讃歎したまわく、善哉善哉、善男子、汝等能く如来に於て随喜の心を発せり。

 

疑念序

此土菩薩疑 (此土菩薩の疑)

◎長行疑念 (長行の疑念)

爾時弥勒菩薩。及八千恒河沙。諸菩薩衆。皆作是念。我等従昔已来。不見不聞。如是大菩薩摩訶薩衆。従地涌出。住世尊前。合掌供養。問訊如来。時弥勒菩薩摩訶薩。知八千恒河沙。諸菩薩等。心之所念。竝欲自決所疑。合掌向仏。以偈問曰

 爾の時に弥勒菩薩及び八千恒河沙の諸の菩薩衆、皆是の念を作さく、我等昔より已来、是の如き大菩薩摩訶薩衆の地より涌出して世尊の前に住して、合掌し供養して如来を問訊したてまつるを見ず聞かず。時に弥勒菩薩摩訶薩、八千恒河沙の諸の菩薩等の心の所念を知り、竝に自ら所疑を決せんと欲して、合掌し仏に向いたてまつりて、偈を以て問うて曰さく、

 

◎偈頌正問 (正問)

 ○問何所来 (何の所より来たれると問う)

 無量千万億 大衆諸菩薩 昔所未曾見 願両足尊説
 是従何所来

  無量千万億 大衆の諸の菩薩は
  昔より未だ曾て見ざる所なり 願わくは両足尊説きたまえ
  是れ何れの所より来れる 

 

 ○問何縁来 (何の縁をもって来たれると問う)

 以何因縁集 巨身大神通 智慧ッ思議
 其志念堅固 有大忍辱力 衆生所楽見 為従何所来

  何の因縁を以て集れる
  巨身にして大神通あり 智慧思議し・し
  其の志念堅固にして 大忍辱力あり
  衆生の見んと楽う所なり 為れ何れの所より来れる

 

 ○叙其数量 (其の数量を叙す)

 一一諸菩薩 所将諸眷属 其数無有量 如恒河沙等
 或有大菩薩 将六万恒沙 如是諸大衆 一心求仏道
 是諸大師等 六万恒河沙 倶来仏供養 及護持是経
 将五万恒沙 其数過於是 四万及三万 二万至一万
 一千一百等 乃至一恒沙 半及三四分 億万分之一
 千万那由他 万億諸弟子 乃至於半億 其数過復上
 百万至一万 一千及一百 五十与一十 乃至三二一
 単已無眷属 楽於独処者 倶来至仏所 其数転過上
 如是諸大衆 若人行籌数 過於恒沙劫 猶不能尽知

  一一の諸の菩薩 所将の諸の眷属
  其の数量有ること無く 恒河沙等の如し
  或は大菩薩の 六万恒沙を将いたるあり
  是の如き諸の大衆 一心に仏道を求む
  是の諸の大師等 六万恒河沙あり
  倶に来って仏を供養し 及び是の経を護持す
  五万恒沙を将いたる 其の数是れに過ぎたり
  四万及び三万 二万より一万に至る
  一千一百等 乃至一恒沙
  半及び三四分 億万分の一
  千万那由他 万億の諸の弟子
  乃ち半億に至る 其の数復上に過ぎたり
  百万より一万に至り 一千及び一百
  五十と一十と 乃至三二一
  単已にして眷属なく 独処を楽う者
  倶に仏所に来至せる 其の数転た上に過ぎたり
  是の如き諸の大衆 若し人籌を行いて数うること
  恒沙劫を過ぐとも 猶お尽くして知ること能わじ

 

 

 叙=順序立てて述べること

 ○問其師与法 (其の師と法とを問う)

 是諸大威徳 精進菩薩衆 誰為其説法 教化而成就
 従誰初発心 称揚何仏法 受持行誰経 修習何仏道

  是の諸の大威徳 精進の菩薩衆は
  誰か其の為に法を説き 教化して成就せる
  誰に従って初めて発心し 何れの仏法を称揚し
  誰の経を受持し行じ 何れの仏道を修習せる

 

 ○弥勒結請 (弥勒の結請)

  △結歓神力 (神力を結歓す)

 如是諸菩薩 神通大智力

  是の如き諸の菩薩 神通大智力あり

 

  △請答来処 (来処を答えたまえと請う)

 四方地震裂 皆従中涌出
 世尊我昔来 未曾見是事 願説其所従 国土之名号
 我常遊諸国 未曾見是事

  四方の地震裂して 皆中より涌出せり
  世尊我昔より来 未だ曾て是の事を見ず
  願わくは其の所従の 国土の名号を説きたまえ
  我常に諸国に遊べども 未だ曾て是の事を見ず

 

  △請答来縁 (来縁を答えたまえと請う)

 我於此衆中 乃不識一人
 忽然従地出 願説其因縁

  我此の衆の中に於て 乃し一人をも識らず
  忽然に地より出でたり 願わくは其の因縁を説きたまえ

 

  △大衆同請 (大衆同じく請う)

 今此之大会 無量千百億
 是諸菩薩等 皆欲知此事 是諸菩薩衆 本末之因縁

  今此の大会の 無量百千億なる
  是の諸の菩薩等 皆此の事を知らんと欲す
  是の諸の菩薩衆の 本末の因縁あるべし

 

  △請答師主 (師主を答えたまえと請う)

 無量徳世尊 唯願決衆疑

  無量徳の世尊 唯願わくは衆の疑を決したまえ

 

他土菩薩疑 (他土菩薩の疑)

爾時釈迦牟尼仏。分身諸仏。従無量千万億。他方国土来者。在於八方。諸宝樹下。師子座上。結跏趺坐。其仏侍者。各各見是。菩薩大衆。三千大千世界四方。
従地涌出。住於虚空。各白其仏言。世尊。此諸無量無辺阿僧祇。菩薩大衆。従何所来。

 爾の時に釈迦牟尼仏の分身の諸仏無量千万億の他方の国土より来りたまえる者、八方の諸の宝樹下の師子座上に在して結跏趺坐したまえり。其の仏の侍者、各各に是の菩薩大衆の三千大千世界の四方に於て、地より涌出して虚空に住せるを見て、各其の仏に白して言さく、世尊、此の諸の無量無辺阿僧祇の菩薩大衆は何れの所より来れる。

 

諸仏抑持 (諸仏の抑持)

爾時諸仏。各告侍者。諸善男子。且待須臾。有菩薩摩訶薩。名曰弥勒。釈迦牟尼仏。之所授記。次後作仏。已問斯事。仏今答之。汝等自当。因是得聞。

 爾の時に諸仏各侍者に告げたまわく、 諸の善男子、且く須臾を待て、菩薩摩訶薩あり、名を弥勒という。釈迦牟尼仏の授記したもう所なり。次いで後に作仏すべし。已に斯の事を問いたてまつる。仏今之を答えたまわん。汝等自ら当に是れに因って聞くことを得べし。

 

誡許

長行

爾時釈迦牟尼仏。告弥勒菩薩。

 爾の時に釈迦牟尼仏、弥勒菩薩に告げたまわく、

 

◎誡

 ○述歎

善哉善哉。阿逸多。乃能問仏。如是大事。

 善哉善哉、阿逸多、乃し能く仏に是の如き大事を問えり。

 

 ○正誡

汝等当共一心。被精進鎧。発堅固意。

 汝等当に共に一心に精進の鎧を被堅固の意を発すべし。

 

◎許

 ○標示果智・自証

如来今欲。顕発宣示。諸仏智慧。

 如来今諸仏の智慧・

 

 ○三世開化教・化他

諸仏自在。神通之力。諸仏師子。奮迅之力。諸仏威猛。大勢之力。

 諸仏の自在神通の力、諸仏の師子奮迅の力、諸仏の威猛大勢の力を顕発し宣示せんと欲す。

 

偈頌

爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言

 爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく、

 

◎誡

 当精進一心 我欲説此事 勿得有疑悔

  当に精進して一心なるべし 我此の事を説かんと欲す
  疑悔あること得ることなかれ 

 

◎許

 ○果智

 仏智ッ思議

  仏智は思議し・し

 

 ○化教

 汝今出信力 住於忍善中 昔所未聞法 今皆当得聞
 我今安慰汝 勿得懐疑懼 仏無不実語 智慧不可量
 所得第一法 甚深ッ分別 如是今当説 汝等一心聴

  汝今信力を出して 忍善の中に住せよ
  昔より未だ聞かざる所の法 今皆当に聞くことを得べし
  我今汝を安慰す 疑懼を懐くことを得ることなかれ
  仏は不実の語なし 智慧量るべからず
  得る所の第一の法は 甚深にして分別し・し
  是の如きを今当に説くべし 汝等一心に聴け

 

略開近顕遠動執生疑

略開近顕遠


長行

爾時世尊。説是偈已。告弥勒菩薩。

 爾の時に世尊、是の偈を説き已って、弥勒菩薩に告げたまわく、

 

◎双答

 ○答師弟

我今於此大衆。宣告汝等。阿逸多。是諸大菩薩摩訶薩。無量無数阿僧祇。従地涌出。汝等昔所未見者。我於是娑婆世界。得阿耨多羅三藐三菩提已。教化示導。是諸菩薩。調伏其心。令発道意。

 我今此の大衆に於て汝等に宣告す。阿逸多、是の諸の大菩薩摩訶薩の無量無数阿僧祇にして地より涌出せる、汝等昔より未だ見ざる所の者は、我是の娑婆世界に於て阿耨多羅三藐三菩提を得已って、是の諸の菩薩を教化示導し、其の心を調伏して道の意を発さしめたり。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

 ○答処所

此諸菩薩。皆於是娑婆世界之下。此界虚空中住。

 此の諸の菩薩は皆是の娑婆世界の下此の界の虚空の中に於て住せり。

 

◎双釈

 ○釈師弟

  △双修智断

於諸経典。読誦通利。思惟分別。正憶念。

 諸の経典に於て読誦通利し思惟分別し正憶念せり。

 

  △双証智断

阿逸多。是諸善男子等。不楽在衆。多有所説。常楽静処。勤行精進。未曾休息。

 阿逸多、是の諸の善男子等は衆に在って多く所説あることを楽わず。常に静かなる処を楽い勤行精進して未だ曾て休息せず。

 

 ○釈処所

亦不依止。人天而住。常楽深智。無有障碍。亦常楽於諸仏之法。一心精進。求無上慧。

 亦人天に依止して住せず。常に深智を楽って障碍あることなし。亦常に諸仏の法を楽い、一心に精進して無上慧を求む。

 


偈頌

爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言

 爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく、

 

◎双答

 ○答師弟

 阿逸汝当知 是諸大菩薩 従無数劫来 修習仏智慧
 悉是我所化 令発大道心 此等是我子 依止是世界
 常行頭陀事 志楽於静処 捨大衆礪~ 不楽多所説
 如是諸子等 学習我道法 昼夜常精進 為求仏道故

  阿逸汝当に知るべし 是の諸の大菩薩は
  無数劫より来 仏の智慧を修習せり
  悉く是れ我が所化として 大道心を発さしめたり
  此れ等は是れ我が子なり 是の世界に依止せり
  常に頭陀の事を行じて 静かなる処を志楽し
  大衆の・閙を捨てて 所説多きことを楽わず
  是の如き諸子等は 我が道法を学習して
  昼夜に常に精進す 仏道を求むるをもっての故に

 

 ○答処所

 在娑婆世界 下法空中住 志念力堅固 常勤求智慧
 説種種妙法 其心無畏所

  娑婆世界の 下法の空中に在って住す
  志念力堅固にして 常に智慧を勤求し
  種々の妙法を説いて 其の心畏るる所なし

 

◎双釈

 ○釈師弟

 我於伽耶城 菩提樹下坐
 得最成正覚 転無上法輪 爾乃教化之 令初発道心
 今皆住不退 悉当得成仏 我今説実語 汝等一心信

  我伽耶城 菩提樹下に於て坐して
  最正覚を成ずることを得て 無上の法輪を転じ
  爾して乃ち之を教化して 初めて道心を発さしむ
  今皆不退に住せり 悉く当に成仏を得べし
  我今実語を説く 汝等一心に信ぜよ

 

 ○釈処所

 我従久遠来 教化是等衆

  我久遠より来 是れ等の衆を教化せり

 

因疑更請


長行

◎動執生疑

爾時弥勒菩薩摩訶薩。及無数諸菩薩等。心生疑惑。怪未曾有。而作是念。云何世尊。於少時間。教化如是。無量無辺阿僧祇。諸大菩薩。令住阿耨多羅三藐三菩提。

 爾の時に弥勒菩薩摩訶薩及び無数の諸の菩薩等、心に疑惑を生じ未曾有なりと怪んで是の念を作さく、云何ぞ世尊少時の間に於て是の如き無量無辺阿僧祇の諸の大菩薩を教化して、阿耨多羅三藐三菩提に住せしめたまえる。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

◎騰疑致請


 法説

  ○執近疑遠

即白仏言。世尊。如来為太子時。出於釈宮。去伽耶城不遠。坐於道場。得成阿耨多羅三藐三菩提。従是已来。始過四十余年。世尊云何。於此少時。大作仏事。以仏勢力。以仏功徳。教化如是。無量大菩薩衆。当成阿耨多羅三藐三菩提。

 即ち仏に白して言さく、世尊、如来太子たりし時釈の宮を出でて、伽耶城を去ること遠からず、道場に坐して阿耨多羅三藐三菩提を成ずることを得たまえり。是れより已来始めて四十余年を過ぎたり。世尊、云何ぞ此の少時に於て大に仏事を作したまえる。仏の勢力を以てや、仏の功徳を以てや、是の如き無量の大菩薩衆を教化して当に阿耨多羅三藐三菩提を成ぜしめたもうべき。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

  ○執遠疑近

世尊。此大菩薩衆。仮使有人。於千万億劫。数不能尽。不得其辺。斯等久遠已来。於無量無辺諸仏所。植諸善根。成就菩薩道。常修梵行。

 世尊、此の大菩薩衆は、仮使人あって千万億劫に於て数うとも尽くすこと能わず、其の辺を得じ。斯れ等は久遠より已来無量無辺の諸仏の所に於て、諸の善根を植え菩薩の道を成就し常に梵行を修せり。

 

  ○難信結請

世尊。如此之事。世所難信。

 世尊、此の如きの事は世の信じ難き所なり。

 


 譬説

  ○開譬

   △成道近

譬如有人。色美髪黒。年二十五。

 譬えば人あって色美しく髪黒くして年二十五なる、

 

   △所化多

指百歳人。言是我子。其百歳人。亦指年少。言是我父。生育我等。

 百歳の人を指して、是れ我が子なりと言わん。其の百歳の人亦少年を指して、是れ我が父なり我等を生育せりと言わん。

 

   △結難信

是事難信。

 是の事信じ難きが如く、

 

 ○合譬

   △合近譬

仏亦如是。得道已来。其実未久。

 仏の亦是の如し。得道より已来其れ実に未だ久しからず。

 

   △合遠譬

而此大衆。諸菩薩等。已於無量。千万億劫。為仏道故。勤行精進。善入出住。無量百千万億三昧。得大神通。久修梵行。善能次第。習諸善法。巧於問答。人中之宝。一切世間。甚為希有。

 而るに此の大衆の諸の菩薩等は已に無量千万億劫に於て、仏道の為の故に勤行精進し、善く無量百千万億の三昧に入・出・住し大神通を得、久しく梵行を修し、善能次第に諸の善法を習い、問答巧みに、人中の宝として、一切世間に甚だ為れ希有なり。

 

   △合請答

    ×挙仏語

今日世尊。方云得仏道時。初令発心。教化示導。令向阿耨多羅三藐三菩提。世尊。得仏未久。乃能作此。大功徳事。

 今日世尊、方に仏道を得たまいし時初めて発心せしめ教化示導して、阿耨多羅三藐三菩提に向わしめたりと云う。世尊仏を得たまいて未だ久しからざるに、乃し能く此の大功徳の事を作したまえり。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

    ×明請意・為現在

我等雖復信仏。随宜所説。仏所出言。未曾虚妄。仏所知者。皆悉通達。

 我等は復仏の随宜の所説・仏の所出の言、未だ曾て虚妄ならずと信じ、仏の所知は、皆悉く通達すと雖も、

 

    ×明請意・為未来

然諸新発意菩薩。於仏滅後。若聞是語。或不信受。而起破法。罪業因縁。

 然も諸の新発意の菩薩、仏の滅後に於て若し是の語を聞かば、或は信受せずして法を破する罪業の因縁を起さん。

 

    ×正請答・除我等疑

唯然世尊。願為解説。除我等疑。

 唯然世尊、願わくは為に解説して我等が疑を除きたまえ。

 

    ×正請答・除未来疑

及未来世。諸善男子。聞此事已。亦不生疑。

 及び未来世の諸の善男子、此の事を聞き已りなば亦疑を生ぜじ。

 


偈頌

爾時弥勒菩薩。欲重宣此義。而説偈言

 爾の時に弥勒菩薩、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言さく、



◎法説

 ○執近

 仏昔従釈種 出家近伽耶 坐於菩提樹 爾来尚未久

  仏昔釈種より 出家して伽耶に近く
  菩提樹に坐したまえり 爾しより来尚お未だ久しからず

 

 ○疑遠

 此諸仏子等 其数不可量 久已行仏道 住神通智力
 善学菩薩道 不染世間法 如蓮華在水 従地而涌出
 皆起恭敬心 住於世尊前 是事難思議

  此の諸の仏子等は 其の数量るべからず
  久しく已に仏道を行じて 神通智力に住せり
  善く菩薩の道を学して 世間の法に染まざること
  蓮華の水に在るが如し 地よりして涌出し
  皆恭敬の心を起して 世尊の前に住せり
  是の事思議し難し 

 

 ○結請

 云何而可信
 仏道得甚近 所成就甚多 願為除衆疑 如実分別説

  云何ぞ信ずべき
  仏の得道は甚だ近く 成就したまえる所は甚だ多し
  願わくは為に衆の疑を除き 実の如く分別し説きたまえ

 

◎譬説

 ○開譬

 譬如少壮人 年始二十五 示人百歳子 髪白而面皺
 是等我所生 子亦説是父 父少而子老 挙世不信所

  譬えば少壮の人 年始めて二十五なる
  人に百歳の子の 髪白くして面皺めるを示して
  是れ等我が所生なりといい 子も亦是れ父なりと説かん
  父は少くして子は老いたる 世を挙って信ぜざる所ならんが如く

 

 ○合譬

  △執近

 世尊亦如是 得道来甚近

  世尊も亦是の如し 得道より来甚だ近し

 

  △疑遠

 是諸菩薩等 志固無怯弱
 従無量劫来 而行菩薩道 巧於難問答 其心無畏所
 忍辱心決定 端正有威徳 十方仏所讃 善能分別説
 不楽在人衆 常好在禅定 為求仏道故 於下空中住

  是の諸の菩薩等は 志固くして怯弱なし
  無量劫より来 而も菩薩の道を行ぜり
  難問答に巧みにして 其の心畏るる所なく
  忍辱の心決定し 端正にして威徳あり
  十方の仏の讃めたもう所なり 善能分別し説く
  人衆に在ることを楽わず 常に好んで禅定に在り
  仏道を求むるをもっての故に 下の空中に於て住せり

 

  △請答

 我等従仏聞 於此事無疑 願仏為未来 演説令開解
 若有於此経 生疑不信者 即当堕悪道 願今為解説
 是無量菩薩 云何於少時 教化令発心 而住不退地

  我等は仏に従って聞きたてまつれば 此の事に於て疑なし
  願わくは仏未来の為に 演説して開解せしめたまえ
  若し此の経に於て 疑を生じて信ぜざることあらん者は
  即ち当に悪道に堕つべし 願わくは今為に解説したまえ
  是の無量の菩薩をば 云何してか少時に於て
  教化し発心せしめて 不退の地に住せしめたまえる



妙法蓮華経巻第五


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