妙法蓮華経勧持品第十三


← 妙法蓮華経提婆達多品第十二 |法華経解説トップ妙法蓮華経安楽行品第十四 →

科段

迹門・流通分・他土此土進勧流通

受持を明かす

二万の菩薩命を奉じて此土に経を弘む

五百・八千の声聞発誓して他土に経を弘む

諸比丘尼授記を請う

◎仏姨

○記を請う
○記を与う

◎耶輸

○記を請う
○記を与う

◎諸尼領解す

◎諸尼発誓して経を弘む

 

勧持を明かす

長行

◎仏眼を以て視はす
◎菩薩告敕を請う
◎仏黙然たり
◎仏意に敬順す
◎発誓して経を弘む

偈頌

◎忍辱の衣を著す

○時節を論じて以て著衣を明す
○所忍の境を明す
  △俗衆増上慢
  △道門増上慢
  △僣聖増上慢
○著衣の意を明かす

◎如来の室に入る

◎如来の座に坐す

◎総結して知しめせと請う

迹門流通分四段中第三他土此土進勧流通二

妙法蓮華経勧持品第十三

初明受持 (受持を明かす) ※ 相違は底本による

二万薩〓奉命此土弘経 (二万の菩薩命を奉じて此土に経を弘む) ※ 相違は底本による

爾時薬王菩薩摩訶薩。及大楽説。菩薩摩訶薩。与二万菩薩眷属倶。皆於仏前。作是誓言。唯願世尊。不以為慮。我等於仏滅後。当奉持読誦。説此経典。後悪世衆生。善根転少。多増上慢。貧利供養。増不善根。遠離解脱。雖難教化。我等当起。大忍力。読誦此経。持説書写。種種供養。不惜身命。

 爾の時に薬王菩薩摩訶薩及び大楽説菩薩摩訶薩、二万の菩薩眷属と倶に、皆仏前に於て是の誓言を作さく、
 唯願わくは世尊、以て慮いしたもうべからず。我等仏の滅後に於て当に此の経典を奉持し読誦し説きたてまつるべし。後の悪世の衆生は善根転た少くして増上慢多く、利供養を貧り、不善根を増し、解脱を遠離せん。教化すべきこと難しと雖も、我等当に大忍力を起して、此の経を読誦し持説し書写し、種々に供養して身命を惜まざるべし。

 

五百八千諸大声聞発誓他土弘経 (五百・八千の声聞発誓して他土に経を弘む) ※ 相違は底本による

爾時衆中。五百阿羅漢。得受記者。白仏言世尊。我等亦自誓願。於異国土。広説此経。復有学無学八千人。得受記者。従座而起。合掌仏向。作是誓言。世尊。我等亦当。於他国土。広説此経。所以者何。是娑婆国中。人多弊悪。懐増上慢。功徳浅薄。瞋濁諂曲。心不実故。

 爾の時に衆中の五百の阿羅漢受記を得たる者、仏に白して言さく、世尊、我等亦自ら誓願すらく、異の国土に於て広く此の経を説かん、復学無学八千人の受記を得たる者あり。座より而も起って合掌し仏に向いたてまつりて、是の誓言を作さく、
 世尊、我等亦当に他の国土に於て広く此の経を説くべし。所以は何ん、是の娑婆国の中は人弊悪多く、増上慢を懐き功徳浅薄に、瞋濁諂曲にして心不実なるが故に。

阿羅漢(あらかん) サンスクリット arhan の音写。応供(おうぐ)と漢訳される。尊敬される人、供養するに値する聖者という意味。小乗仏教の修行者たる声聞(しょうもん)の最高位。

諸比丘尼請授記 (諸比丘尼授記を請う)

◎仏姨

 ○請記 (記を請う)

爾時仏姨母。摩訶波闍波提比丘尼。与学無学比丘尼。六千人倶。従座而起。一心合掌。瞻仰尊顔。目不暫捨。

 爾の時に仏の姨母摩訶波闍波提比丘尼、学無学の比丘尼六千人と倶に、座より而も起って一心に合掌し、尊顔を瞻仰して目暫くも捨てず。

 

 ○与記 (記を与う)

於時世尊。告曇弥。何故憂色。而視如来。汝心将無謂。我不説汝名。授阿耨多羅三藐三菩提記耶。曇弥。我先總説。一切声聞。皆已授記。今汝欲知記者。将来之世。当於六万八千億。諸仏法中。為大法師。及六千学無学比丘尼。倶為法師。汝如是漸漸。具菩薩道。当得作仏。号一切衆生喜見如来。応供。正ェ知。明行足。善逝。世間解。無上士。調御丈夫。天人師。仏。世尊。曇弥。是一切衆生喜見仏。及六千菩薩。転次授記。得阿耨多羅三藐三菩提。

 時に世尊、・曇弥に告げたまわく、
 何が故ぞ憂の色にして如来を視る。汝が心に将に我汝が名を説いて阿耨多羅三藐三菩提の記を授けずと謂うこと無し耶。・曇弥、我先に總じて一切の声聞に皆已に授記すと説きき、今汝記を知らんと欲せば、将来の世に当に六万八千億の諸仏の法の中に於て大法師と為るべし。及び六千の学無学の比丘尼も倶に法師と為らん。汝是の如く漸漸に菩薩の道を具して、当に作仏することを得べし。一切衆生喜見如来・応供・正遍知・明行足・善逝・世間解・無上士・調御丈夫・天人師・仏・世尊と号けん。・曇弥、是の一切衆生喜見仏及び六千の菩薩、転次に授記して阿耨多羅三藐三菩提を得ん。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

◎耶輸

 ○請記 (記を請う)

爾時羅、羅母。耶輸陀羅比丘尼。作是念。世尊。於授記中。独不説我名。

 爾の時に羅・羅の母耶輸陀羅比丘尼、是の念を作さく、世尊、授記の中に於て独我が名を説きたまわず。

 

 ○与記 (記を与う)

仏告耶輸陀羅。汝於来世。百千万億諸仏法中。修菩薩行。為大法師。漸具仏道。於善国中。当得作仏。号具足千万光相如来。応供。正ェ知。明行足。善逝。世間解。無上士。調御丈夫。天人師。仏。世尊。仏寿無量阿僧祇劫。

仏、耶輸陀羅に告げたまわく、汝来世百千万億の諸仏の法の中に於て、菩薩の行を修し大法師と為り漸く仏道を具して、善国の中に於て当に作仏することを得べし。具足千万光相如来・応供・正遍知・明行足・善逝・世間解・無上士・調御丈夫・天人師・仏・世尊と号けん。仏の寿無量阿僧祇劫ならん。

 

◎諸尼領解 (諸尼領解す)

爾時摩訶波闍波提比丘尼。及耶輸陀羅比丘尼。竝其眷属。皆大歓喜。得未曾有。即於仏前。而説偈言

 世尊導師 安穏天人 我等記聞 心安具足

 爾の時に摩訶波闍波提比丘尼及び耶輸陀羅比丘尼竝に其の眷属、皆大に歓喜し未曾有なることを得、即ち仏前に於て偈を説いて言さく、
  世尊導師 天人を安穏ならしめたもう
  我等記を聞いて 心安く具足しぬ



◎諸尼発誓弘経 (諸尼発誓して経を弘む)

諸比丘尼。説是偈已。白仏言。世尊。我等亦能。於他方国土。広宣此経。

 諸の比丘尼是の偈を説き已って、仏に白して言さく、世尊、我等亦能く他方の国土に於て、広く此の経を宣べん。

 

次明勧持 (勧持を明かす) ※ 相違は底本による

長行

◎仏眼視 (仏眼を以て視はす)

爾時世尊。視八十万億那由他。諸菩薩摩訶薩。

 爾の時に世尊、八十万億那由他の諸の菩薩摩訶薩を視そなわす。

 

◎菩薩請告敕 (菩薩告敕を請う)

是諸菩薩。皆是阿惟越致。転不退法輪。得諸陀羅尼。即従座起。至於仏前。一心合掌。而作是念。若世尊。告勅我等。持説此経。当如仏教。広宣斯法。

 是の諸の菩薩は皆是れ阿惟越致にして、不退の法輪を転じ、諸の陀羅尼を得たり。即ち座より起って仏前に至り一心に合掌して、是の念を作さく、若し世尊、我等に此の経を持説せよと告勅したまわば、当に仏の教の如く広く斯の法を宣ぶべし。

 

◎仏黙然 (仏黙然たり)

復作是念。仏今黙然。不見告勅。我当云何。

 復是の念を作さく、仏今黙然として告勅せられず。我当に云何がすべき。

 

◎敬順仏意 (仏意に敬順す)

時諸菩薩。恭順仏意。竝欲自満本願。

 時に諸の菩薩、仏意に恭順し竝に自ら本願を満ぜんと欲して、

 

◎発誓弘経 (発誓して経を弘む)

便於仏前。作獅子吼。而発誓言。世尊。我等。於如来滅後。周旋往返。十方世界。能令衆生。書写此経。受持読誦。解説其義。如法修行。正憶念。皆是仏之威力。唯願世尊。在於他方。遥見守護。

 便ち仏前に於いて師子吼を作して、誓言を発さく、世尊、我等如来の滅後に於て、十方世界に周旋往返して、能く衆生をして此の経を書写し、受持し読誦し、其の義を解説し、法の如く修行し、正憶念せしめん、皆是れ仏の威力ならん。唯願わくは世尊、他方に在すとも遥かに守護せられよ。

 

偈頌

即時諸菩薩。倶発同声。而説偈言

 即時に諸の菩薩倶に同じく声を発して、偈を説いて言さく。

 

◎被忍辱衣弘経 (忍辱の衣を著す) ※ 相違は底本による

 ○総論時節以明著衣 (時節を論じて以て著衣を明す)

 唯願不為慮 於仏滅度後 恐怖悪世中 我等当広説

  唯願わくは慮いしたもうべからず 仏の滅度の後
  恐怖悪世の中に於て 我等当に広く説くべし

 

 ○別明所忍境 (所忍の境を明す)

  △別明邪見之人 (俗衆増上慢) ※ 相違は底本による

 有諸無知人 悪口罵詈等 及加刀杖者 我等皆当忍

  諸の無智の人 悪口罵詈等し
  及び刀杖を加うる者あらん 我等皆当に忍ぶべし

 

  △道門増上慢者 (道門増上慢)

 悪世中比丘 邪智心諂曲 未得謂為得 我慢心充満

  悪世の中の比丘は 邪智にして心諂曲に
  未だ得ざるを為れ得たりと謂い 我慢の心充満せん

 

  △僣聖増上慢者 (僣聖増上慢)

 或有阿練若 納衣在空閑 自謂行真道 軽賎人間者
 貧著利養故 与白衣説法 為世所恭敬 如六通羅漢
 是人懐悪心 常念世俗事 仮名阿練若 好出我等過
 而作如是言 此諸比丘等 為貧利養故 説外道論議
 自作此経典 誑惑世間人 為求名聞故 分別説是経
 常在大衆中 欲毀我等故 向国王大臣 婆羅門居士
 及余比丘衆 誹謗説我悪 謂是邪見人 説外道論議

  或は阿練若に 納衣にして空閑に在って
  自ら真の道を行ずと謂うて 人間を軽賎する者あらん
  利養に貧著するが故に 白衣のために法を説いて
  世に恭敬せらるること 六通の羅漢の如くならん
  是の人悪心を懐き 常に世俗の事を念い
  名を阿練若に仮つて 好んで我等が過を出さん
  而も是の如き言を作さん 此の諸の比丘等は
  利養を貧るを為ての故に 外道の論議を説く
  自ら此の経典を作って 世間の人を誑惑す
  名聞を求むるを為ての故に 分別して是の経を説くと
  常に大衆の中に在って 我等を毀らんと欲するが故に
  国王大臣 婆羅門居士
  及び余の比丘衆に向って 誹謗して我が悪を説いて
  是れ邪見の人 外道の論議を説くと謂わん

 

 ○総明著衣意 (著衣の意を明かす)

 我等敬仏故 悉忍是諸悪 謂斯所軽言 汝等皆是仏
 如此軽慢言 皆当忍受之 濁劫悪世中 多有諸恐怖
 悪鬼入其身 罵詈毀辱我 我等敬信仏 当著忍辱鎧
 為説是経故 忍此諸難事 我不愛身命 但惜無上道
 我等於来世 護持仏所嘱 世尊自当知 濁世悪比丘
 不知仏方便 随宜所説法 悪口而顰蹙 数数見擯出
 遠離於塔寺 如是等衆悪 念仏告勅故 皆当忍是事

  我等仏を敬うが故に 悉く是の諸悪を忍ばん
  斯れに軽しめて 汝等は皆是れ仏なりと謂われん
  此の如き軽慢の言を 皆当に忍んで之を受くべし
  濁劫悪世の中には 多くの諸の恐怖あらん
  悪鬼其の身に入って 我を罵詈毀辱せん
  我等仏を敬信して 当に忍辱の鎧を著るべし
  是の経を説かんが為の故に 此の諸の難事を忍ばん
  我身命を愛せず 但無上道を惜む
  我等来世に於て 仏の所嘱を護持せん
  世尊自ら当に知しめすべし 濁世の悪比丘は
  仏の方便 随宜所説の法を知らず
  悪口して・蹙し 数数擯出せられ
  塔寺を遠離せん 是の如き等の衆悪をも
  仏の告勅を念うが故に 皆当に是の事を忍べし

 

◎入如来室弘経 (如来の室に入る)

 諸聚落城邑 其有求法者 我皆到其所 説仏所嘱法

  諸の聚落城邑に 其れ法を求むる者あらば
  我皆其の所に到って 仏の所嘱の法を説かん

 

◎坐如来座弘経 (如来の座に坐す)

 我是世尊使 処衆無所畏 我当善説法 願仏安穏住

  我は是れ世尊の使なり 衆に処するに畏るる所なし
  我当に善く法を説くべし 願わくは仏安穏に住したまえ

 

◎総結請知 (総結して知しめせと請う)

 我於世尊前 諸来十方仏 発如是誓言 仏自知我心

  我世尊の前 諸の来りたまえる十方の仏に於て
  是の如き誓言を発す 仏自ら我が心を知しめせ



← 妙法蓮華経提婆達多品第十二 |法華経解説トップ妙法蓮華経安楽行品第十四 →


ホーム法華経解説法華仏教仏教作者についてメール