← 妙法蓮華経常不軽菩薩品第二十 ｜法華経解説トップ｜妙法蓮華経属累品第二十二 →
|
|
|
妙法蓮華経如来神力品第二十一
○時節
爾時千世界。微塵等菩薩摩訶薩。従地涌出者。皆於仏前。一心合掌。瞻仰尊顔。
爾の時に千世界微塵等の菩薩摩訶薩の地より涌出せる者、皆仏前に於て一心に合掌して尊顔を瞻仰して、
○処所
而白仏言。世尊我等。於仏滅後。世尊分身。所在国土。滅度之処。
仏に白して言さく、世尊我等仏の滅後、世尊分身所在の国土・滅度の処に於て、
※時節・処所の場所は底本本文を無視
○誓願
当広説此経。所以者何。我等亦自。欲得是真浄大法。受持読誦。解説書写。而供養之。
当に広く此の経を説くべし。所以は何ん、我等も亦自ら是の真浄の大法を得て、受持・読誦し解説し・書写して之を供養せんと欲す。
○所対之衆 （所対の衆）
爾時世尊。於文殊師利等。無量百千万億。旧住娑婆世界。菩薩摩訶薩。及諸比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷。天龍。夜叉。乾闥婆。阿修羅。迦楼羅。緊那羅。摩羅伽。人非人等。一切衆前。現大神力。
爾の時に世尊、文殊師利等の無量百千万億の旧住娑婆世界の菩薩摩訶薩、及び諸の比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷・天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩・羅伽・人非人等の一切の衆の前に於て、大神力を現じたもう。
[解説]比丘(びく)・比丘尼(びくに)・優婆塞(うばそく)・優婆夷(うばい) 四衆。比丘は男性の出家した僧侶。比丘尼は出家した尼僧。優婆塞は在家の男性信徒。優婆夷は在家の女性信徒。
○正現十神力 （正しく十神力を現ず）
△一吐長舌相 （出広長舌）
出広長舌。上至梵世。
広長舌を出して上梵世に至らしめ、
△二通身放光 （通身放光）
一切毛孔。放於無量。無数色光。皆悉照。十方世界。衆宝樹下。師子座上諸仏。亦復如是。出広長舌。放無量光。釈迦牟尼仏。及宝樹下諸仏。現神力時。満百千歳。
一切の毛孔より無量無数色の光を放って、皆悉く遍く十方世界を照したもう。衆の宝樹下の師子座上の諸仏も亦復是の如く、広長舌を出し、無量の光を放ちたもう。釈迦牟尼仏及び宝樹下の諸仏神力を現じたもう時百千歳を満ず。
△三謦 （謦）
然後還摂舌相。一時謦。
然して後に還って舌相を摂めて、
△四弾指 （弾指）
倶共弾指。
一時に謦・し倶共に弾指したもう。
△五地六種震動 （地六種動）
是二音声。至十方。諸仏世界。地皆六種震動。
是の二つの音声、遍く十方の諸仏の世界に至って、地皆六種に震動す。
※底本本文を無視
△六普見大会 （普見大会）
其中衆生。天龍。夜叉。乾闥婆。阿修羅。迦楼羅。緊那羅。摩羅伽。人非人等。以仏神力故。皆見此娑婆世界。無量無辺。百千万億。衆宝樹下。師子座上諸仏。及見釈迦牟尼仏。共多宝如来。在宝塔中。坐師子座。又見無量無辺百千万億。菩薩摩訶薩。及諸四衆。恭敬圍繞。釈迦牟尼仏。既見是已。皆大歓喜。得未曾有。
其の中の衆生、天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩・羅伽・人非人等、仏の神力を以ての故に、皆此の娑婆世界の無量無辺百千万億の衆の宝樹下の師子座上の諸仏を見、及び釈迦牟尼仏、多宝如来と共に宝塔の中に在して、師子の座に坐したまえるを見たてまつり、又無量無辺百千万億の菩薩摩訶薩及び諸の四衆の、釈迦牟尼仏を恭敬し圍繞したてまつるを見る。既に是れを見已って、皆大に歓喜して未曾有なることを得。
△七空中唱声 （空中唱声）
即時諸天。於虚空中。高声唱言。過此無量無辺。百千万億。阿僧祇世界。有国名娑婆是中。有仏名釈迦牟尼。今為諸菩薩摩訶薩。説大乗経。名妙法蓮華。教菩薩法。仏所護念。汝等当深心随喜。亦当礼拝。供養釈迦牟尼仏。
即時に諸天、虚空の中に於て高声に唱えて言わく、
此の無量無辺百千万億阿僧祇の世界を過ぎて国あり娑婆と名く。是の中に仏います、釈迦牟尼と名けたてまつる。今諸の菩薩摩訶薩の為に、大乗経の妙法蓮華・教菩薩法・仏所護念と名くるを説きたもう。汝等当に深心に随喜すべし。亦当に釈迦牟尼仏を礼拝し供養すべし。
△八咸皆帰命 （咸皆帰命）
彼諸衆生。聞虚空中。声已合掌向。娑婆世界。作如是言。南無釈迦牟尼仏。南無釈迦牟尼仏。
彼の諸の衆生、虚空の中の声を聞き已って合掌して娑婆世界に向って、是の如き言を作さく、
南無釈迦牟尼仏、南無釈迦牟尼仏と。
△九遙散諸物 （遙散諸物）
以種種華香。瓔珞幡蓋。及諸厳身之具。珍宝妙物。皆共遥散。娑婆世界。所散諸物。従十方来。譬如雲集。変成宝帳覆此間。諸仏之上。
種々の華・香・瓔珞・幡蓋及び諸の厳身の具・珍宝・妙物を以て、皆共に遥かに娑婆世界に散ず。所散の諸物十方より来ること、譬えば雲の集まるが如し。変じて宝帳となって遍く此の間の諸仏の上に覆う。
△十同一仏土 （同一仏土）
有時十方世界。通達無碍。如一仏土。
時に十方世界、通達無碍にして一仏土の如し。
爾時仏告。上行等菩薩大衆。
爾時に仏、上行等の菩薩大衆に告げたまわく、
○釈歎付嘱
諸仏神力。如是無量無辺。不可思議。若我以是神力。於無量無辺。百千万億阿僧祇劫。為嘱累故。説此経功徳。猶不能尽。
諸仏の神力は是の如く無量無辺不可思議なり。若し我是の神力を以て無量無辺百千万億阿僧祇劫に於て、嘱累の為の故に此の経の功徳を説かんに、猶お尽くすこと能わじ。
○結要付嘱
以要言之。如来一切。所有之法。如来一切。自在神力。如来一切。秘要之蔵。如来一切。甚深之事。皆於此経。宣示顕説。
要を以て之を言わば、如来の一切の所有の法・如来の一切の自在の神力・如来の一切の秘要の蔵・如来の一切の甚深の事、皆此の経に於て宣示顕説す。
○勧奨付嘱
是故汝等。於如来滅後。応当一心。受持読誦。解説書写。如説修行。所在国土。若有受持読誦。解説書写。如説修行。若経巻。所住之処。若於園中。若於林中。若於樹下。若於僧坊。若白衣舎。若在殿堂。若山谷曠野。是中皆応。起塔供養。
是の故に汝等如来の滅後に於て、応当に一心に受持・読誦し解説・書写し説の如く修行すべし。所在の国土に、若しは受持・読誦し解説・書写し、説の如く修行し、若しは経巻所住の処あらん。若しは園中に於ても、若しは林中に於ても、若しは樹下に於ても、若しは僧坊に於ても、若しは白衣の舎にても、若しは殿堂に在っても、若しは山谷曠野にても、是の中に皆塔を起てて供養すべし。
○釈付嘱意 （付嘱の意を釈す）
所以者何。当知是処。即是道場。諸仏於此。得阿耨多羅三藐三菩提。諸仏於此。転於法輪。諸仏於此。而般涅槃。
所以は何ん、当に知るべし、是の処は即ち是れ道場なり。諸仏此に於て阿耨多羅三藐三菩提を得、諸仏此に於て法輪を転じ、諸仏此に於て般涅槃したもう。
[解説]
阿耨多羅三藐三菩提（あのくたらさんみゃくさんぼだい） 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。
爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言
爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく、
諸仏救世者 住於大神通 為悦衆生故 現無量神力
舌相至梵天 身放無数光 為求仏道者 現此希有事
諸仏謦声 及弾指之声 周聞十方国 地皆六種動
以仏滅度後 能持是経故 諸仏皆歓喜 現無量神力
諸仏救世者 大神通に住して
衆生を悦ばしめんが為の故に 無量の神力を現じたもう
舌相梵天に至り 身より無数の光を放って
仏道を求むる者の為に 此の希有の事を現じたもう
諸仏謦・の声 及び弾指の声
周く十方の国に聞えて 地皆六種に動ず
仏の滅度の後に 能く是の経を持たんを以ての故に
諸仏皆歓喜して 無量の神力を現じたもう
○総頌四法 （総じて四法を頌す）
嘱累是経故 讃美受持者 於無量劫中 猶故不能尽
是人之功徳 無辺無有窮 如十方虚空 不可得辺際
是の経を嘱累せんが故に 受持の者を讃美すること
無量劫の中に於てすとも 猶故尽くすこと能わじ
是の人の功徳は 無辺にして窮まりあることなけん
十方虚空の 辺際を得べからざるが如し
○別頌四法 （別して四法を頌す）
△一切之法 [名] （一切の法）
能持是経者 則為已見我 亦見多宝仏 及諸分身者
又見我今日 教化諸菩薩
能く是の経を持たん者は 則ち為れ已に我を見
亦多宝仏 及び諸の分身者を見
又我が今日 教化せる諸の菩薩を見るなり
△自在神力 [用] （自在の神力）
能持是経者 令我及分身
滅度多宝仏 一切皆歓喜 十方現在仏 竝過去未来
亦見亦供養 亦令得歓喜
能く是の経を持たん者は 我及び分身
滅度の多宝仏をして 一切皆歓喜せしめ
十方現在の仏 竝に過去未来
亦は見亦は供養し 亦は歓喜することを得せしめん
△秘要之蔵 [体] （秘要の蔵）
諸仏坐道場 所得秘要法
能持是経者 不久亦当得
諸仏道場に坐して 得たまえる所の秘要の法
能く是の経を持たん者は 久しからずして亦当に得べし
△甚深之事 [宗] （甚深の事）
能持是経者 於諸法之義
名字及言辞 楽説無窮尽 如風於空中 一切無障碍
於如来滅後 知仏所説経 因縁及次第 随義如実説
如日月光明 能除諸幽冥 斯人行世間 能滅衆生闇
教無量菩薩 畢竟住一乗
能く是の経を持たん者は 諸法の義
名字及び言辞に於て 楽説窮尽なきこと
風の空中に於て 一切障碍なきが如くならん
如来の滅後に於て 仏の所説の経の
因縁及び次第を知って 義に随って実の如く説かん
日月の光明の 能く諸の幽冥を除くが如く
斯の人世間に行じて 能く衆生の闇を滅し
無量の菩薩をして 畢竟して一乗に住せしめん
○総頌結意 （総じて結意を頌す）
是故有智者 聞此功徳利
於我滅度後 応受持斯経 是人於仏道 決定無有疑
是の故に智あらん者 此の功徳の利を聞いて
我が滅度の後に於て 斯の経を受持すべし
是の人仏道に於て 決定して疑あることなけん
← 妙法蓮華経常不軽菩薩品第二十 ｜法華経解説トップ｜妙法蓮華経属累品第二十二 →