妙法蓮華経法師品第十


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科段

迹門流通分・功深福重命勧留通・釈尊自説


能持の人を歓ず

◎稟道(ひんどう)の弟子

◎授道の師門

長行
偈頌

 

所持の法を歓じ弘経の軌を示す

長行

◎経法を歓ず

◎法軌を示す

偈頌

◎総じて勧む

◎経法を歓ず

◎法軌を示す

◎利益を明す

◎結歓

迹門流通分四段中第一・明弘経功深福重命勧留通未聞利益広大二・初釈尊自説即是今法師品

妙法蓮華経法師品第十

能持の人を歓ず

◎稟道(ひんどう)弟子功深福重 (稟道の弟子)

○仏世弟子 (仏世の弟子)

爾時世尊。因薬王菩薩。告八万大士。薬王。汝見是大衆中。無量諸天。龍王。夜叉。乾闥婆。阿修羅。迦楼羅。緊那羅。摩、羅伽。人与非人。及比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷。求声聞者。求辟支仏者。求仏道者。如是等類。減於仏前。聞妙法華経。一偈一句。乃至一念随喜者.我皆与授記。当得阿耨多羅三藐三菩提。

 爾の時に世尊、薬王菩薩に因せて八万の大士に告げたまわく、
 薬王、汝是の大衆の中の無量の諸天・龍王・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩・羅伽・人と非人と及び比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷の声聞を求むる者・辟支仏を求むる者・仏道を求むる者を見るや。是の如き等類、減く仏前に於て妙法華経の一偈一句を聞いて、乃至一念も随喜せん者は我皆記を与え授く。当に阿耨多羅三藐三菩提を得べし。

[解説]

比丘(びく)・比丘尼(びくに)・優婆塞(うばそく)・優婆夷(うばい) 四衆。比丘は男性の出家した僧侶。比丘尼は出家した尼僧。優婆塞は在家の男性信徒。優婆夷は在家の女性信徒。

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

○滅後弟子 (滅後の弟子)

仏告薬王。又如来滅度之後。若有人。聞妙法華経。乃至。一偈一句。一念随喜者。我亦与授。阿耨多羅三藐三菩提記。

 仏、薬王に告げたまわく、
 又如来の滅度の後に、若し人あって妙法華経の乃至一偈・一句を聞いて一念も随喜せん者には、我亦阿耨多羅三藐三菩提の記を与え授く。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

◎授道師門功深福重 (授道の師門)


長行

○別明仏在世下品師

若復有人。受持。読誦。解説。書写。妙法華経。乃至一偈。於此経巻。敬視如仏。種種供養。華香瓔珞。抹香。塗香。焼香。所W。幢幡。衣服。妓楽。乃至合掌恭敬。薬王。当知是諸人等。已曽供養。十万億仏。於諸仏所。成就大願。愍衆生故。生此人間。薬王若有人問。何等衆生。於未来世。当得作仏。応示是諸人等。於未来世。必得作仏。何以故。若善男子。善女人。於法華経。乃至一句。受持。読誦。解説。書写。種種供養経巻。華香瓔珞。抹香。塗香。焼香。所W。幢幡。衣服。妓楽。合掌恭敬。是人一切世間。所応贍奉。応以如来供養。而供養之。当知此人。是大菩薩。成就阿耨多羅三藐三菩提。哀愍衆生。願生此間。広演分別。妙法華経。

 若し復人あって妙法華経の乃至一偈を受持・読誦し解説・書写し、此の経巻に於て敬い視ること仏の如くにして、種々に華・香・瓔珞・抹香・塗香・焼香・・蓋・幢幡・衣服・妓楽を供養し、乃至合掌恭敬せん。薬王当に知るべし、是の諸人等は、已に曽て十万億の仏を供養し、諸仏の所に於いて、大願を成就して、衆生を愍むが故に、此の人間に生ずるなり。薬王、若し人あって、何等の衆生か未来世に於て当に作仏することを得べきと問わば、示すべし、是の諸人等は未来世に於て必ず作仏することを得んと。何を以ての故に、若し善男子・善女人、法華経の乃至一句に於ても受持・読誦し解説・書写し、種種に経巻に華・香・瓔珞・抹香・塗香・焼香・・蓋・幢幡・衣服・妓楽を供養し、合掌恭敬せん。是の人は一切世間の贍奉すべき所なり。如来の供養を以て之を供養すべし。当に知るべし、此の人は是れ大菩薩の阿耨多羅三藐三菩提を成就して、衆生を哀愍し願って此の間に生れ、広く妙法華経を演べ分別するなり。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

○別明仏在世上品師

何況尽能受持。種種供養者。薬王。当知是人。自捨清浄業報。於我滅度後。愍衆生故。生於悪世。広演此経。

 何に況んや、尽くして能く受持し種々に供養せん者をや。薬王、当に知るべし、是の人は自ら清浄の業報を捨てて、我が滅度の後に於て、衆生を愍むが故に悪世に生れて広く此の経を演ぶるなり。

 

○別明仏滅後下品師

若是善男子。善女人。我滅度後。能窃為一人。説法華経。乃至一句。当知是人。則如来使。如来所遣。行如来事。

 若し是の善男子・善女人、我が滅度の後、能く窃かに一人の為にも法華経の乃至一句を説かん。当に知るべし、是の人は則ち如来の使なり。如来の所遣として如来の事を行ずるなり。

 

○別明仏滅後上品師

何況於大衆中。広為人説。

 何に況んや大衆の中に於て広く人の為に説かんをや。

 

○総明逆者得罪

薬王。若有悪人。以不善心。於一劫中。現於仏前。常毀罵仏。其罪尚軽。若人以一悪言。毀レ在家出家。読誦。法華経者。其罪甚重。

 薬王、若し悪人あって不善の心を以て一劫の中に於て、現に仏前に於て常に仏を毀罵せん、其の罪尚お軽し。若し人一の悪言を以て、在家・出家の法華経を読誦する者を毀・せん、其の罪甚だ重し。

 

○総明順者得福

薬王。其有読誦。法華経者。当知是人。以仏荘厳。而自荘厳。則為如来。肩所荷担。其所至方。応随向礼。一心合掌。恭敬供養。尊重讃歎。華香。瓔珞。抹香。塗香。焼香。所W。幢幡。衣服。肴膳。作諸妓楽。人中上供。而供養之。応持天宝。而以散之。天上宝聚。応以奉献。所以者何。是人歓喜説法。須臾聞之。即得究竟阿耨多羅三藐三菩提故。

 薬王、其れ法華経を読誦すること有らん者は、当に知るべし、是の人は仏の荘厳を以て自ら荘厳するなり。則ち如来の肩に荷担せらるることを為ん。其の所至の方には随って向い礼すべし。一心に合掌し恭敬・供養・尊重讃歎し、華・香・瓔珞・抹香・塗香・焼香・・蓋・幢幡・衣服・肴膳をもってし、諸の妓楽を作し、人中の上供をもって之を供養せよ。天の宝を持って、以て之を散ずべし。天上の宝聚以て奉献すべし。所以は何ん、是の人歓喜して法を説かんに、須臾も之を聞かば即ち阿耨多羅三藐三菩提を究竟することを得んが故なり。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 


偈頌

爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言

 爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく

 

○勧自行化他

 若欲住仏道 成就自然智 常当勤供養 受持法華者
 其有欲疾得 一切種智慧 当受持此経 竝供養持者

  若し仏道に住して 自然智を成就せんと欲せば
  常に当に勤めて 法華を受持せん者を供養すべし
  其れ疾く 一切種智慧を得んと欲することあらんは
  当に是の経を受持し 竝に持者を供養すべし

 

○在世下品師

 若有能受持 妙法華経者 当知仏所使 愍念諸衆生

  若し能く妙法華経を 受持することあらん者は
  当に知るべし仏の所使として 諸の衆生を愍念するなり

 

○在世上品師

 諸有能受持 妙法華経者 捨於清浄土 愍衆故生此
 当知如是人 自在所欲生 能於此悪世 広説無上法
 応以天華香 及天宝衣服 天上妙宝聚 供養説法者

  諸の能く 妙法華経を受持することあらん者は
  清浄の土を捨てて 衆を愍むが故に此に生ずるなり
  当に知るべし是の如き人は 生ぜんと欲する所に自在なれば
  能く此の悪世に於て 広く無上の法を説くなり
  天の華香 及び天宝の衣服
  天上の妙宝聚を以て 説法者に供養すべし

 

○滅後上品師

 吾滅後悪世 能持是経者 当合掌礼敬 如供養世尊
 上饌衆甘美 及種種衣服 供養是仏子 冀得須臾聞

  吾が滅後の悪世に 能く是の経を持たん者をば
  当に合掌し礼敬して 世尊に供養するが如くすべし
  上饌衆の甘美 及び種々の衣服をもって
  是の仏子に供養して 須臾も聞くことを得んと冀うべし

 

○滅後下品師

 若能於後世 受持是経者 我遣在人中 行於如来事

  若し能く後の世に於て 是の経を受持せん者は
  我遣わして人中にあらしめて 如来の事を行ぜしむるなり

 

○逆者得罪

 若於一劫中 常懐不善心 作色而罵仏 獲無量重罪
 其有読誦持 是法華経者 須臾加悪言 其罪復彼過

  若し一劫の中に於て 常に不善の心を懐いて
  色を作して仏を罵らんは 無量の重罪を獲ん
  其れ 是の法華経を読誦し持つことあらん者に
  須臾も悪言を加えんは 其の罪復彼れに過ぎん

 

○順者得福

 有人求仏道 而於一劫中 合掌在我前 以無数偈讃
 由是讃仏故 得無量功徳 歎美持経者 其福復過彼
 於八十億劫 以最妙色声 及与香味触 供養持経者
 如是供養已 若得須臾聞 則応自欣慶 我今獲大利

  人あって仏道を求めて 一劫の中に於て
  合掌し我が前にあって 無数の偈を以て讃めん
  是の讃仏に由るが故に 無量の功徳を得ん
  持経者を歎美せんは 其の福復彼れに過ぎん
  八十億劫に於て 最妙の色声
  及与香味触を以て 持経者に供養せよ
  是の如く供養し已って 若し須臾も聞くことを得ば
  則ち自ら欣慶すべし 我今大利を獲つと

 

○歓経尊妙

 薬王今告汝 我所説諸経 而於此経中 法華最第一

  薬王今汝に告ぐ 我が所説の諸経
  而も此の経の中に於て 法華最も第一なり

 

歓美所持法示弘経方軌 (所持の法を歓じ弘経の軌を示す)

長行


◎歓経法

 ○約法歓

爾時。仏告。復薬王菩薩摩訶薩。我所説経典。無量千万億。已説。今説。当説。而於其中。此法華経。最為難信難解。薬王。此経是諸仏。秘要之蔵。不可分布。妄授与人。諸仏世尊。之所守護。従昔已来。未曽顕説。而此経者。如来現在。猶多怨嫉。況滅度後。

 爾の時に仏、復薬王菩薩摩訶薩に告げたまわく、
 我が所説の経典無量千万億にして、已に説き今説き当に説かん。而も其の中に於て此の法華経最も為れ難信難解なり。薬王此の経は是れ諸仏の秘要の蔵なり。分布して妄りに人に授与すべからず。諸仏世尊の守護したもう所なり。昔より已来未だ曽て顕説せず。而も此の経は如来の現在すら猶お怨嫉多し、況んや滅度の後をや。

 

 ○約人歓

薬王当知。如来滅後。其能書持。読誦供養。為他人説者。如来則為。以衣覆之。又為他方。現在諸仏。之所護念。是人有大信力。及志願力。諸善根力。当知是人。与如来共宿。則為如来。手摩其頭。

 薬王当に知るべし、如来の滅後に其れ能く書持し読誦し供養し、他人の為に説かん者は、如来則ち衣を以て之を覆いたもうべし。又他方の現在の諸仏に護念せらるることを為ん。是の人は大信力及び志願力・諸善根力あらん。当に知るべし、是の人は如来と共に宿するなり。則ち如来の手をもって其の頭を摩でたもうを為ん。

 

 ○約処歓

薬王。在在処処。若説。若読。若誦。若書。若経巻所住之処。皆応起七宝塔。極令高広厳飾。不須復安舎利。所以者何。此中已有。如来全身。此塔応以。一切華香瓔珞。所W幢幡。妓楽歌頌。供養恭敬。尊重讃歎。若有人。得見此塔。礼拝供養。当知是等。皆近阿耨多羅三藐三菩提。

 薬王、在在処処に若しは説き若しは読み若しは誦し若しは書き若しは経巻所住の処には、皆七宝の塔を起て極めて高広厳飾ならしむべし。復舎利を安ずることを須いず。所以は何ん。此の中には已に如来の全身います。此の塔をば一切の華・香・瓔珞・・蓋・幢幡・妓楽・歌頌を以て、供養・恭敬・尊重・讃歎したてまるつべし。若し人あって此の塔を見たてまつることを得て礼拝し供養せん。当に知るべし、是等は皆阿耨多羅三藐三菩提に近づきぬ。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

 ○約因歓

薬王。多有人。在家出家。行菩薩道。若不能得。見聞読誦。書持供養。是法華経者。当知是人。未善行菩薩道。若有得聞。是経典者。乃能善行。菩薩之道。

 薬王、多く人あって在家・出家の菩薩の道を行ぜんに、若し是の法華経を見聞し読誦し書持し供養すること得ること能わずんば、当に知るべし、是の人は未だ善く菩薩の道を行ぜざるなり。若し是の経典を聞くこと得ることあらん者は、乃ち能善菩薩の道を行ずるなり。

 

 ○約果歓

  △明近果

其有衆生。求仏道者。若見。若聞。是法華経。聞已信解。受持者。当知是人。得近阿耨多羅三藐三菩提。

 其れ衆生の仏道を求むる者あって、是の法華経を若しは見、若しは聞き、聞き已って信解し受持せば、当に知るべし、是の人は阿耨多羅三藐三菩提に近づくことを得たり。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

  △開譬

薬王。譬如有人。渇乏須水。於彼高原。穿鑿之求。猶見乾土。知水尚遠。施功不已。転見湿土。遂漸至泥。其心決定。知水必近。

 薬王、譬えば人あって渇乏して水を須いんとして、彼の高原に於て穿鑿して之を求むるに、猶お乾ける土を見ては水尚お遠しと知る。功を施すこと已まずして、転た湿える土を見、遂に漸く泥に至りぬれば、其の心決定して水必ず近しと知らんが如く、

 

  △合譬

菩薩亦復如是。若未聞未解。未能修習。是法華経。当知是人。去阿耨多羅三藐三菩提尚遠。若得聞解。思惟修習。必知得近。阿耨多羅三藐三菩提。

 菩薩も亦復是の如し。若し是の法華経を未だ聞かず、未だ解せず、未だ修習すること能わずんば、当に知るべし、是の人は阿耨多羅三藐三菩提を去ること尚お遠し。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

  △釈近

所以者何。一切菩薩。阿耨多羅三藐三菩提。皆属此経。此経開方便門。示真実相。是法華経蔵。深固幽遠。無人能到。今仏教化。成就菩薩。
而為開示。

 若し聞解し思惟し修習することを得ば、必ず阿耨多羅三藐三菩提に近づくことを得たりと知れ。所以は何ん、一切の菩薩の阿耨多羅三藐三菩提は皆此の経に属せり。此の経は方便の門を開いて真実の相を示す。是の法華経の蔵は深固幽遠にして人の能く到るなし。今仏、菩薩を教化し成就して為に開示す。

[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。

 

  △簡非

薬王。若有菩薩。聞是法華経。驚疑怖畏。当知是為新発意菩薩。若声聞人。聞是経。驚疑怖畏。当知是為。増上慢者。

 薬王、若し菩薩あって是の法華経を聞いて驚疑し怖畏せん。当に知るべし、是れを新発意の菩薩と為づく。若し声聞の人是の経を聞いて驚疑し怖畏せん。当に知るべし。是れを増上慢の者となづく。

 


◎法軌を示す

○示方法

薬王。若善男子。善女人。如来滅後。欲為四衆。説是法華経者。云何応説。是善男子。善女人。入如来室。著如来衣。坐如来座。爾乃応為四衆。広説斯経。如来室者。一切衆生中。大慈悲心是。如来衣者。柔和忍辱心是。如来座者。一切法空是。安住是中。然後以不懈怠心。為諸菩薩。及四衆。広説是法華経。

 薬王、若し善男子・善女人あって、如来の滅後に四衆の為に是の法華経を説かんと欲せば、云何してか説くべき。是の善男子・善女人は、如来の室に入り如来の衣を著如来の座に坐して、爾して乃し四衆の為に広く斯の経を説くべし。如来の室とは一切衆生の中の大慈悲心是れなり。如来の衣とは柔和忍辱の心是れなり。如来の座とは一切法空是れなり。是の中に安住して、然して後に不懈怠の心を以て、諸の菩薩及び四衆の為に、広く是の法華経を説くべし。

 

○示利益

 △遣化人

薬王。我於余国。遣化人。為其集聴法衆。

 薬王、我余国に於て、化人を遣わして其れが為に聴法の衆を集め、

 

 △遣化四衆

亦遣化。比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷。聴其説法。是諸化人。聞法信受。随順不逆。

 亦化の比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷を遣わして其の説法を聴かしめん。是の諸の化人、法を聞いて信受し随順して逆らわじ。

[解説]

比丘(びく)・比丘尼(びくに)・優婆塞(うばそく)・優婆夷(うばい) 四衆。比丘は男性の出家した僧侶。比丘尼は出家した尼僧。優婆塞は在家の男性信徒。優婆夷は在家の女性信徒。

 

 △遣八部

若説法者。在空閑処。我時広遣。天龍鬼神。乾闥婆。阿修羅等。聴其説法。

 若し説法者空閑の処に在らば、我時に広く天・龍・鬼神・乾闥婆・阿修羅等を遣わして、其の説法を聴かしめん。

 

 △見仏身

我雖在異国。時時令説法者。得見我身。

 我異国に在りと雖も、時時に説法者をして我が身を見ることを得せしめん。

 

 △与総持

若於此経。忘失句逗。我還為説。令得具足。

 若し此の経に於て句逗を忘失せば、我還って為に説いて具足することを得せしめん。

 

偈頌

爾時世尊。欲重宣此義。而説偈言

 爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく、


◎総勧 (総じて勧む)

 欲捨諸懈怠 応当聴此経 是経難得聞 信受者亦難

  諸の懈怠を捨てんと欲せば 当に此の経を聴くべし
  是の経は聞くことを得難し 信受する者亦難し


◎歓経法 (経法を歓ず)

 ○開譬

 如人渇須水 穿鑿於高原 猶見乾燥土 知水去尚遠
 漸見湿土泥 決定知近水

  人の渇して水を須いんとして 高原を穿鑿するに
  猶お乾燥ける土を見ては 水を去ること尚遠しと知る
  漸く湿える土泥を見ては 決定して水に近づきぬと知らんが如し

 

 ○合譬

 薬王汝当知 如是諸人等
 不聞法華経 去仏智甚遠 若聞是深経 決了声聞法
 是諸経之王 聞已諦思惟 当知此人等 近於仏智慧

  薬王汝当に知るべし 是の如き諸人等
  法華経を聞かずんば 仏智を去ること甚だ遠し
  若し是の深経の 声聞の法を決了して
  是れ諸経の王なるを聞き 聞き已って諦かに思惟せん
  当に知るべし此の人等は 仏の智慧に近づきぬ


◎示方軌 (法軌を示す)

 若人説此経 応入如来室 著於如来衣 而坐如来座
 処衆無畏所 広為分別説 大慈悲為室 柔和忍辱衣
 諸法空為座 処此為説法 若説此経時 有人悪口罵
 加刀杖瓦石 念仏故応忍

  若し人此の経を説かば 如来の室に入り
  如来の衣を著 而も如来の座に坐して
  衆に処して畏るる所なく 広く為に分別し説くべし
  大慈悲を室とし 柔和忍辱を衣とし
  諸法空を座とす 此れに処して為に法を説け
  若し此の経を説かん時 人あって悪口し罵り
  刀杖瓦石を加うとも 仏を念ずるが故に忍ぶべし

 


◎明利益 (利益を明す)

 ○五盆総意

 我千万億土 現浄堅固身
 於無量億劫 為衆生説法

  我千万億の土に 浄堅固の身を現じて
  無量億劫に於て 衆生の為に法を説く

 

 ○遣四衆

 若我滅度後 能説此経者
 我遣化四衆 比丘比丘尼 及清信士女 供養於法師

  若し我滅度の後に 能く此の経を説かん者には
  我化の四衆 比丘比丘尼
  及び清信士女を遣わして 法師を供養せしめ

 

 ○遣化人

 引導諸衆生 集之令聴法 若人欲加悪 刀杖及瓦石
 則遣変化人 為之作衛護

  諸の衆生を引導して 之を集めて法を聴かしめん
  若し人悪 刀杖及び瓦石を加えんと欲せば
  則ち変化の人を遣わして 之が為に衛護と作さん

 

 ○与総持

 若説法之人 独在空閑処
 寂莫無人声 読誦此経典 我爾時為現 清浄光明身
 若忘失章句 為説令通利

  若し説法の人 独空閑の処に在って
  寂莫として人の声なからんに 此の経典を読誦せば
  我爾の時に為に 清浄光明の身を現ぜん
  若し章句を忘失せば 為に説いて通利せしめん

 

 ○見仏身

 若人具是徳 或為四衆説
 空処読誦経 皆得見我身

  若し人是の徳を具して 或は四衆の為に説き
  空処にして経を読誦せば 皆我が身を見ることを得ん

 

 ○遣八部

 若人在空閑 我遣天龍王
 夜叉鬼神等 為作聴法衆 是人楽説法 分別無゚礙
 諸仏護念故 能令大衆喜

  若し人空閑にあらば 我天龍王
  夜叉鬼神等を遣わして 為に聴法の衆となさん
  是の人法を楽説し 分別して・礙なからん
  諸仏護念したもうが故に 能く大衆をして喜ばしめん

 


◎結勧

 若親近法師 速得菩薩道
 随順是師学 得見恒沙仏

  若し法師に親近せば 速かに菩薩の道を得
  是の師に随順して学せば 恒沙の仏を見たてまつることを得ん

 


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