妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五


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科段

化他流通・三昧乗乗

両番の問答

長行

◎前番問答 是約人

○無尽意の問

○如来の総答

 △人数
 △苦に遭う
 △聞名称号
 △解脱を得

○如来の別答

 △口の機応
 △意の機応
 △身の機応

○勧持名答

 △勧持
 △格量
 △結歎

◎後番問答 是約法

○三業を問う

 △身業
 △口業
 △意業

○如来の別答

 △三種の聖身
 △六種の天身
 △五種の人身
 △四衆身
 △四種の婦女身
 △童男童女身
 △八部身
 △執金剛身

○如来の総答

○供養を勧む

○旨を受く

 △命を奉ず
 △受けず
 △重ねて奉ず
 △仏勧む
 △即ち受く
 △総結

偈頌

◎双頌二問

○徳を歎ず

○双問

◎双頌二答

○経家の叙

○加えて行願を総歎す

○別頌二答

 △観音得名
 △普門示現

◎双頌二勧

○境智の深妙を明して常念を勧む
○感応の難測を明して勿疑を勧む
○供養を勧む

聞品の功徳

◎持地得を歎ず

◎聞品の得益

 

流通分・付嘱流通三・次化他流通四・次勗受命弘法弟子・三昧乗乗二・次普門品

妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五

両番問答 (両番の問答)

長行

◎前番問答是約人

 ○無尽意問 (無尽意の問)

爾時無尽意菩薩。即従座起。偏袒右肩。合掌仏向。而作是言。世尊。観世音菩薩。以何因縁。名観世音。

 爾の時に無尽意菩薩、即ち座より起って、偏に右の肩を袒にし、合掌し仏に向いたてまつりて、是の言を作さく、世尊、観世音菩薩は何の因縁を以てか観世音と名くる。

 

 ○如来総答 (如来の総答)

  △人数

仏告無尽意菩薩。善男子。若有無量百千万億衆生。

 仏、無尽意菩薩に告げたまわく、善男子、若し無量百千万億の衆生あって

 

  △遭苦 (苦に遭う)

受諸苦悩。

 諸の苦悩を受けんに、

 

  △聞名称号

聞是観世音菩薩。一心名称。

 是の観世音菩薩を聞いて一心に名を称せば、

 

  △得解脱 (解脱を得)

観世音菩薩。即時観其音声。皆得解脱。

 観世音菩薩即時に其の音声を観じて、皆解脱することを得せしめん。

 

 ○如来別答 (如来の別答)

  △口機応 七難 (口の機応)

若有持是。観世音菩薩名者。

 若し是の観世音菩薩の名を持つことあらん者は、

 

   ×火難

設入大火。火不能焼。由是菩薩。威神力故。

 設い大火に入るとも火も焼くこと能わじ、是の菩薩の威神力に由るが故に、

 

   ×水難

若為大水所漂。称其名号。即得浅処。

 若し大水に漂わされんに、其の名号を称せば即ち浅き処を得ん。

 

   ×羅刹難

若有百千万億衆生。為求金銀瑠璃。ィゥ碼碯。珊瑚琥珀。真珠等宝。入於大海。仮使黒風。吹其船舫。飄堕羅刹鬼国。其中若有。乃至一人。称観世音菩薩名者。是諸人等。皆得解脱。羅刹之難。以是因縁。名観世音。

 若し百千万億の衆生あって金・銀・瑠璃・・・・碼碯・珊瑚・琥珀・真珠等の宝を求むるを為て大海に入らんに、仮使黒風其の船舫を吹いて、羅刹鬼の国に飄堕せん。其の中に若し乃至一人あって観世音菩薩の名を称せば、是の諸人等皆羅刹の難を解脱することを得ん。是の因縁を以て観世音と名く。

 

   ×刀杖難 或名王難

若復有人。臨当被害。称観世音菩薩名者。彼所執刀杖。尋段段壊。而得解脱。

 若し復人あって当に害せらるべきに臨んで、観世音菩薩の名を称せば、彼の執れる所の刀杖尋いで段段に壊れて、解脱することを得ん。

 

   ×鬼難

若三千大千国土。満中夜叉羅刹。欲来悩人。聞其称観世音菩薩。名者。是諸悪鬼。尚不能以。悪眼視之。況復加害。

 若し三千大千国土に中に満てる夜叉・羅刹、来って人を悩さんと欲せんに、其の観世音菩薩の名を称するを聞かば、是の諸の悪鬼、尚お悪眼を以て之を視ること能わじ、況んや復害を加えんや。

 

   ×伽鎖難

設復有人。若有罪。若無罪。械伽鎖。検繋其身。称観世音菩薩名者。皆悉断壊。即得解脱。

 設い復人あって若しは罪あり若しは罪なきに、・械・枷鎖其の身を検繋せん。観世音菩薩の名を称せば、皆悉く断壊して、即ち解脱することを得ん。

 

   ×怨賊難

若三千大千国土。満中怨賊。有一商主。将諸商人。斎持重宝。経過険路。其中一人。作是唱言。諸善男子。勿得恐怖。汝等応当一心。称観世音菩薩名号。是菩薩。能以無畏。施於衆生。汝等若称名者。於此怨賊。当得解脱。衆商人聞。倶発声言。南無観世音菩薩。称其名故。即得解脱。

 若し三千大千国土に中に満てる怨賊あらんに、一りの商主あって諸の商人を将い、重宝を斎持して険路を経過せん。其の中に一人是の唱言を作さん、諸の善男子、恐怖することを得る勿れ。汝等応当に一心に観世音菩薩の名号を称すべし。是の菩薩は能く無畏を以て衆生に施したもう。汝等若し名を称せば、此の怨賊に於て当に解脱することを得べし。衆の商人聞いて倶に声を発して南無観世音菩薩と言わん。其の名を称するが故に即ち解脱することを得ん。

 

   ×結神力

無尽意。観世音菩薩摩訶薩。威神之力。巍巍如是。

 無尽意、観世音菩薩摩訶薩は威神の力巍巍たること是の如し。

 

  △意機応 三毒 (意の機応)

   ×淫貪

若有衆生。多於淫欲。常念恭敬。観世音菩薩。便得離欲。

 若し衆生あって淫欲多からんに、常に念じて観世音菩薩を恭敬せば、便ち欲を離るることを得ん。

 

   ×瞋恚

若多瞋恚。常念恭敬。観世音菩薩。便得離瞋。

 若し瞋恚多からんに、常に念じて観世音菩薩を恭敬せば、便ち瞋を離るることを得ん。

 

   ×愚痴

若多愚痴。常念恭敬。観世音菩薩。便得離痴。

 若し愚痴多からんに、常に念じて観世音菩薩を恭敬せば、便ち痴を離るることを得ん。

 

   ×結神力

無尽意。観世音菩薩。有如是等。大威神力。多所饒益。是故衆生。常応心念。

 無尽意、観世音菩薩は是の如き等の大威神力あって、饒益する所多し。是の故に衆生常に心に念ずべし。

 

  △身機応 (身の機応) 二求両願

   ×求男

若有女人。設欲求男。礼拝供養。観世音菩薩。便生福徳。智慧之男。

 若し女人あって設い男を求めんと欲し、観世音菩薩を礼拝し供養せば、便ち福徳・智慧の男を生まん。

 

   ×求女

設欲求女。便生端正。有相之女。宿植徳本。衆人愛敬。

 設い女を求めんと欲せば、便ち端正有相の女の宿徳本を植えて衆人に愛敬せらるるを生まん。

 

   ×結不虚

無尽意。観世音菩薩。有如是力。若有衆生。恭敬礼拝。観世音菩薩。福不唐損。

 無尽意、観世音菩薩は是の如き力あり。若し衆生あって観世音菩薩を恭敬礼拝せば、福唐捐ならじ。

 

 ○勧持名答

  △勧持

是故衆生。皆応受持。観世音菩薩名号。

 是の故に衆生皆観世音菩薩の名号を受持すべし。

 

  △格量

無尽意。若有人受持。六十二億恒河沙菩薩名字。復尽形供養。飲食衣服。臥具医薬。於汝意云何。是善男子。善女人功徳多不。無尽意言。甚多世尊。仏言若復有人。受持観世音菩薩名号。乃至一時。礼拝供養。是二人福。正等無異。於百千万億劫。不可窮尽。

 無尽意、若し人あって六十二億恒河沙の菩薩の名字を受持し、復形を尽くすまで飲食・衣服・臥具・医薬を供養せん。汝が意に於て云何、是の善男子・善女人の功徳多しや不や。無尽意の言さく、甚だ多し、世尊。仏の言わく、若し復人あって観世音菩薩の名号を受持し、乃至一時も礼拝し供養せん。是の二人の福、正等にして異ることなけん、百千万億劫に於ても窮め尽くすべからず。

 

  △結歎

無尽意。受持観世音菩薩名号。得如是無量無辺。福徳之利。

 無尽意、観世音菩薩の名号を受持せば是の如き無量無辺の福徳の利を得ん。

 

◎後番問答 是約法

 ○問三業 (三業を問う)

無尽意菩薩。白仏言。世尊。観世音菩薩。

 無尽意菩薩、仏に白して言さく、世尊、観世音菩薩は

 

  △身業

云何遊此。娑婆世界。

 云何してか此の娑婆世界に遊び、

 

  △口業

云何而為。衆生説法。

 云何してか衆生の為に法を説く、

 

  △意業

方便之力。其事云何。

 方便の力其の事云何。

 

 ○如来の別答 (如来別答) 普門示現三十三身

仏告無尽意菩薩。

 仏、無尽意菩薩に告げたまわく、

 

  △三種聖身 (三種の聖身)

   ×仏身

善男子。若有国土衆生。応以仏身得度者。観世音菩薩。即現仏身。而為説法。

  善男子、若し国土の衆生あって仏身を以て得度すべき者には、観世音菩薩即ち仏身を現じて為に法を説き、

 

   ×縁覚身

応以辟支仏身。得度者。即現辟支仏身。而為説法。

 辟支仏の身を以て得度すべき者には、即ち辟支仏の身を現じて為に法を説き、

 

   ×声聞身

応以声聞身。得度者。即現声聞身。而為説法。

 声聞の身を以て得度すべき者には、即ち声聞の身を現じて為に法を説き、

 

  △六種天身 (六種の天身)

   ×梵王身

応以梵王身。得度者。即現梵王身。而為説法。

 梵王の身を以て得度すべき者には、即ち梵王の身を現じて為に法を説き、

 

   ×帝釈身

応以帝釈身。得度者。即現帝釈身。而為説法。

 帝釈の身を以て得度すべき者には、即ち帝釈の身を現じて為に法を説き、

 

   ×自在天身

応以自在天身。得度者。即現自在天身。而為説法。

 自在天の身を以て得度すべき者には、即ち自在天の身を現じて為に法を説き、

 

   ×大自在天身

応以大自在天身。得度者。即現大自在天身。而為説法。

 大自在天の身を以て得度すべき者には、即ち大自在天の身を現じて為に法を説き、

 

   ×天大将軍身

応以天大将軍身。得度者。即現天大将軍身。而為説法。

 天大将軍の身を以て得度すべき者には、即ち天大将軍の身を現じて為に法を説き、

 

   ×毘沙門身

応以毘沙門身。得度者。即現毘沙門身。而為説法。

 毘沙門の身を以て得度すべき者には、即ち毘沙門の身を現じて為に法を説き、

 

 △五種人身 (五種の人身)

   ×小王身

応以小王身。得度者。即現小王身。而為説法。

 小王の身を以て得度すべき者には、即ち小王の身を現じて為に法を説き、

 

   ×長者身

応以長者身。得度者。即現長者身。而為説法。

 長者の身を以て得度すべき者には、即ち長者の身を現じて為に法を説き、

 

   ×居士身

応以居士身。得度者。即現居士身。而為説法。

 居士の身を以て得度すべき者には、即ち居士の身を現じて為に法を説き、

 

   ×宰官身

応以宰官身。得度者。即現宰官身。而為説法。

 宰官の身を以て得度すべき者には、即ち宰官の身を現じて為に法を説き、

 

   ×婆羅門身

応以婆羅門身。得度者。即現婆羅門身。而為説法。

 婆羅門の身を以て得度すべき者には、即ち婆羅門の身を現じて為に法を説き、

 

  △四衆身

応以比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷。身得度者。即現比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷身。而為説法。

 比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷の身を以て得度すべき者には、即ち比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷の身を現じて為に法を説き、

[解説]

比丘(びく)・比丘尼(びくに)・優婆塞(うばそく)・優婆夷(うばい) 四衆。比丘は男性の出家した僧侶。比丘尼は出家した尼僧。優婆塞は在家の男性信徒。優婆夷は在家の女性信徒。

 

  △四種婦女身 (四種の婦女身)

応以長者。居士。宰官。婆羅門婦女身。得度者。即現婦女身。而為説法。

 長者・居士・宰官・婆羅門の婦女の身を以て得度すべき者には、即ち婦女の身を現じて為に法を説き、

 

  △童男童女身

応以童男。童女身。得度者。即現童男。童女身。而為説法。

 童男・童女の身を以て得度すべき者には、即ち童男・童女の身を現じて為に法を説き、

 

  △八部身

応以天龍。夜叉。乾闥婆。阿修羅。迦楼羅。緊那羅。摩、羅伽。人非人等身。得度者。即皆現之。而為説法。

 天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩・羅伽・人非人等の身を以て得度すべき者には、即ち皆之を現じて為に法を説き、

 

  △執金剛身

応以執金剛神身。得度者。即現執金剛神。而為説法。

 執金剛神の身を以て得度すべき者には、即ち執金剛神を現じて為に法を説く。

 

 ○如来総答 (如来の総答)

無尽意。是観世音菩薩。成就如是功徳。以種種形。遊諸国土。度脱衆生。

 無尽意、是の観世音菩薩は是の如き功徳を成就して、種々の形を以て諸の国土に遊んで、衆生を度脱す。

 

 ○勧供養 (供養を勧む)

是故汝等。応当一心。供養観世音菩薩。是観世音菩薩摩訶薩。於怖畏急難之中。能施無畏。是故此娑婆世界。皆号之為。施無畏者。

 是の故に汝等、応当に一心に観世音菩薩を供養すべし。是の観世音菩薩摩訶薩は、怖畏急難の中に於て能く無畏を施す。是の故に此の娑婆世界に皆之を号して施無畏者とす。

 

 ○受旨 (旨を受く)

  △奉命 (命を奉ず)

無尽意菩薩。白仏言。世尊。我今当供養。観世音菩薩。即解頚衆。宝珠瓔珞。価直百千両金。而以与之。作是言。仁者。受此法施。珍宝瓔珞。

 無尽意菩薩、仏に白して言さく、世尊、我今当に観世音菩薩を供養すべし。
 即ち頚の衆宝珠の瓔珞の価直百千両金なるを解いて以て之を与え、是の言を作さく、仁者、此の法施の珍宝の瓔珞を受けたまえ。

 

  △不受 (受けず)

時観世音菩薩。不肯受之。

 時に観世音菩薩肯て之を受けず。

 

  △重奉 (重ねて奉ず)

無尽意。復白観世音菩薩言。仁者。愍我等故。受此瓔珞。

 無尽意、復観世音菩薩に白して言さく、仁者、我等を愍むが故に此の瓔珞を受けたまえ。

 

  △仏勧 (仏勧む)

爾時仏告。観世音菩薩。当愍此。無尽意菩薩。及四衆。天龍。夜叉。乾闥婆。阿修羅。迦楼羅。緊那羅。摩、羅伽。人非人等故。受是瓔珞。

 爾の時に仏、観世音菩薩に告げたまわく、当に此の無尽意菩薩及び四衆・天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩・羅伽・人非人等を愍むが故に是の瓔珞を受くべし。

 

  △即受 (即ち受く)

即時観世音菩薩。愍諸四衆。及於天龍。人非人等。受其瓔珞。分作二分。一分奉釈迦牟尼仏。一分奉多宝仏塔。

 即時に観世音菩薩、諸の四衆及び天・龍・人非人等を愍んで其の瓔珞を受け、分って二分と作して一分は釈迦牟尼仏に奉り、一分は多宝仏塔に奉る。

 

  △総結

無尽意。観世音菩薩。有如是自在神力。遊於娑婆世界。

 無尽意、観世音菩薩は是の如き自在神力あって娑婆世界に遊ぶ。

 

偈頌

爾時無尽意菩薩。以偈問曰

 爾の時に無尽意菩薩、偈を以て問うて曰さく、

 

◎双頌二問

 ○歎徳 (徳を歎ず)

 世尊妙相具

  世尊は妙相具わりたまえり

 

 ○双問

 我今重問彼 仏子何因縁 名為観世音

  我今重ねて彼れを問いたてまつる
  仏子何の因縁あってか 名けて観世音とする

 

◎双頌二答

 ○経家叙 (経家の叙)

 具足妙相尊 偈答無尽意

  妙相を具足したまえる尊 偈をもって無尽意に答えたまわく

 

 ○加総歎行願 (加えて行願を総歎す)

 汝聴観音行 善応諸方所
 弘誓深如海 歴劫不思議 侍多千億仏 発大清浄願

  汝観音の行を聴け 善く諸の方所に応ずる
  弘誓の深きこと海の如し 劫を歴とも思議せじ
  多千億の仏に侍えて 大清浄の願を発せり

 

 ○別頌二答

  △観音得名

   ×総答

 我為汝略説 聞名及見身 心念不空過 能滅諸有苦

  我汝が為に略して説かん 名を聞き及び身を見
  心に念じて空しく過ぎざれば 能く諸有の苦を滅す

 

   ×別答七難 開為十二

    ●第一火難

 仮使興害意 推落大火坑 念彼観音力 火坑変成池

  仮使害の意を興して 大なる火坑に推し落さんに
  彼の観音の力を念ぜば 火坑変じて池と成らん

 

    ●第二水難

 或漂流巨海 龍魚諸鬼難 念彼観音力 波浪不能没

  或は巨海に漂流して 龍魚諸鬼の難あらんに
  彼の観音の力を念ぜば 波浪も没すること能わじ

 

    ●堕須弥山難

 或在須弥峰 為人所推堕 念彼観音力 如日虚空住

  或は須弥の峰に在って 人に推し堕されんに
  彼の観音の力を念ぜば 日の如くにして虚空に住せん

 

    ●堕金剛山難

 或被悪人逐 堕落金剛山 念彼観音力 不能損一毛

  或は悪人に逐われて 金剛山より堕落せんに
  彼の観音の力を念ぜば 一毛をも損すること能わじ

 

    ●第七怨賊難

 或値怨賊繞 各執刀加害 念彼観音力 咸即起慈心

  或は怨賊の遶んで 各刀を執って害を加うるに値わんに
  彼の観音の力を念ぜば 咸く即ち慈心を起さん

 

    ●第四刀杖難

 或遭王難苦 臨刑欲寿終 念彼観音力 刀尋段段壊

  或は王難の苦に遭うて 刑せらるるに臨んで寿終らんと欲せんに
  彼の観音の力を念ぜば 刀尋いで段段に壊れなん

 

    ●第六伽鎖難

 或囚禁伽鎖 手足被械 念彼観音力 釈然得解脱

  或は枷鎖に囚禁せられて 手足に・械を被らんに
  彼の観音の力を念ぜば 釈然として解脱することを得ん

 

    ●呪詛毒薬難

 呪詛諸毒薬 所欲害身者 念彼観音力 還著於本人

  呪詛諸の毒薬に 身を害せんと欲せられん者
  彼の観音の力を念ぜば 還って本人に著きなん

 

    ●第三羅刹難

 或遇悪羅刹 毒龍諸鬼等 念彼観音力 時悉不敢害

  或は悪羅刹 毒龍諸鬼等に遇わんに
  彼の観音の力を念ぜば 時に悉く敢て害せじ

 

    ●悪獣圍繞難

 若悪獣圍繞 利牙爪可怖 念彼観音力 疾走無辺方

  若しは悪獣圍遶して 利き牙爪の怖るべきに
  彼の観音の力を念ぜば 疾く無辺の方に走りなん

 

    ●ク蛇蝮蠍難

 ク蛇及蝮蠍 気毒煙火燃 念彼観音力 尋声自回去

  ・蛇及び蝮蠍 気毒煙火の燃ゆるがごとくならんに
  彼の観音の力を念ぜば 声に尋いで自ら廻り去らん

 

    ●雲雷雹雨難

 雲雷鼓掣電 降雹ロ大雨 念彼観音力 応時得消散

  雲雷鼓掣電し 雹を降らし大なる雨を・がんに
  彼の観音の力を念ぜば 時に応じて消散することを得ん

 

   ×総答三毒二求

 衆生被困厄 無量苦逼身 観音妙智力 能救世間苦

  衆生困厄を被って 無量の苦身を逼めんに
  観音妙智の力 能く世間の苦を救う

 

  △普門示現

   ×頌総答

 具足神通力 広修智方便 十方諸国土 無刹不現身

  神通力を具足し 広く智の方便を修して
  十方の諸の国土に 刹として身を現ぜざることなし

 

   ×頌別答

    ●身業普応

 種種諸悪趣 地獄鬼畜生 生老病死苦 以漸悉令滅

  種々の諸の悪趣 地獄鬼畜生
  生老病死の苦 以て漸く悉く滅せしむ

 

    ●意業普応 ●本観慈悲

 真観清浄観 広大智慧観 悲観及慈観 常願常瞻仰

  真観清浄観 広大智慧観
  悲観及び慈観あり 常に願い常に瞻仰すべし

 

    <智光普照>

 無垢清浄光 慧日破諸闇 能伏災風火 普明照世間

  無垢清浄の光あって 慧日諸の闇を破し
  能く災の風火を伏して 普く明かに世間を照す

 

    ●口業普応・二輪為本

 悲体戒雷震 慈意妙大雲 ロ甘露法雨 滅除煩悩焔

  悲体の戒雷震のごとく 慈意の妙大雲のごとく
  甘露の法雨を・ぎ 煩悩の焔を滅除す

 

   ×加頌顕機

 諍訟経官処 怖畏軍陣中 念彼観音力 衆怨悉退散

  諍訟して官処を経 軍陣の中に怖畏せんに
  彼の観音の力を念ぜば 衆の怨悉く退散せん

 

◎双頌二勧

 ○明境智深妙以勧常念 (境智の深妙を明して常念を勧む)

 妙音観世音 梵音海潮音 勝彼世間音 是故須常念

  妙音観世音 梵音海潮音
  勝彼世間音あり 是の故に須らく常に念ずべし

 

 ○明感応難測以勧勿疑 (感応の難測を明して勿疑を勧む)

 念念勿生疑 観世音浄聖 於苦悩死厄 能為作依怙

  念念に疑を生ずることなかれ 観世音浄聖は
  苦悩死厄に於て 能く為に依怙と作れり

 

 ○勧供養 (供養を勧む)

 具一切功徳 慈眼視衆生 福聚海無量 是故応頂礼

  一切の功徳を具して 慈眼をもって衆生を視る
  福聚の海無量なり 是の故に頂礼すべし

 

聞此品功徳 (聞品の功徳)

◎持地歎得 (持他得を歎ず)

爾時持地菩薩。即従座起。前白仏言。世尊。若有衆生。聞是観世音菩薩。自在之業。普門示現。神通力者。当知是人。功徳不少 

 爾の時に持地菩薩、即ち座より起って、前んで仏に白して言さく、世尊、若し衆生あって是の観世音菩薩品の自在の業・普門示現の神通力を聞かん者は、当に知るべし、是の人の功徳少からじ。

 ※ 底本本文に地持歎得 → 持地歎得 の誤植あり

◎聞品得益 (聞品の得益)

仏説是普門品時。衆中八万四千衆生。皆発無等等。阿耨多羅三藐三菩提心

 仏、是の普門品を説きたもう時、衆中の八万四千の衆生、皆無等等の阿耨多羅三藐三菩提の心を発しき。


[解説]

阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい) 最高の正しい悟りの意味。サンスクリット anuttara samyaksambodhih の音写。阿耨多羅(あのくたら anuttara)は「無上の」という意味。三藐(さんみゃく samyak)は「正しい」の意味。三菩提(さんぼだい sambodhih)は「悟り」の意味。


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